漢方薬の専門家じゃない人間が、いきなり何を言っているのかと思われるかもしれません。
ドラッグストアで販売されていて、病院に行かなくても購入できる漢方薬には、食前、食間など、食事と同じタイミングを指示していません。
漢方専門の薬剤師に聞いたところ、本当は空腹の時に飲んでほしいそうです。具体的に食事の1時間前がいいとのことです。
それはなぜでしょうか。
漢方薬と空腹
漢方薬を「空腹時に飲む」にはそれなりの理由があります。
医薬業界ではわりとポピュラーな話 になりますが、実はその理由に消化管にいる腸内細菌が関わっています。腸内細菌と漢方薬?と疑問に思われる方もいるかもしれません。
その証拠に、このような論文があります。
富山医科薬科で書かれた配糖体は天然のプロドラッグという論文の中には、漢方薬と腸内細菌の関係が示唆されています。
それについて、少し深堀をしていきます。
必須の善玉菌
私たちの体の中(特に腸内)には、共生関係にある微生物が数多く存在していて、厚生労働省の発表によるとおよそ1000種類、100兆個もいるそうです。
最新の研究や書籍ではそれ以上にいると言われることも多いですが、これらを総称して腸内細菌と言います。私たち人間が住む場所を提供する大家とすると、その住人が腸内細菌であるとたとえられることが多いですね。
腸内細菌は共生しているため、私たちの食べたものをエネルギーに生活しています。善玉菌と呼ばれる有益な菌たちはエネルギーの代わりに、酪酸や乳酸などを作り出して腸内環境を正常に保ってくれます。
そんな彼らこそ、漢方薬が私たちの体で働くために実はとても重要な存在 だったのです。
分解される漢方薬
一体何が重要なのか、それは 漢方薬を分解してくれる働き にあります。
誤解を招いてしまいそうなのですが、漢方薬は飲めば効くわけではありません。飲んだ後に、腸内細菌に分解されることで、初めて薬としての効果を発揮する形になることができるのです。
このような薬のことをプロドラッグと言います。ここで言うプロとは専門職の意味ではなく、活性化していない状態を意味するプロになります。
つまり、お腹の調子が良くないと漢方薬が効きにくい状態になっている可能性があるということです。
食事よりも先に
ではなぜ、食事よりも先に漢方薬を飲む必要があるのか。
それは、腸内細菌にとって漢方薬よりも人の摂る食事の方が食べやすいからです。つまり、食事と同時だと選り好みをされてしまう わけです。
私たち人間が空腹の状態である時は、もれなく腸内細菌も空腹なはずです。
お腹がペコペコの時に、生肉とハンバーガーを同時に渡されたとしたら、すぐ食べられるハンバーガーを選びますね。腸内細菌にとって、漢方薬は生肉のように少し食べづらいものなのです。
そんな食べにくい漢方薬を、腸内細菌に食べて分解してもらうには、食事よりも先に腸へ届ける必要があるのです。
子どもへの応用
小さな我が子に抗生物質を与えることが嫌いなため、子どもに風邪症状が出始めた時は早めに漢方薬を使って回復を図ります。
子どもに与える抗生物質について、妻と話し合った時の記事はこちら。 www.otama3.info
漢方薬の専門家から話を聞いてからは、腸内環境への配慮と、漢方薬の効くためのメカニズムを活かすように心がけています。
そのため、少し汚い話ですが腸内環境の状況を確認するために、子どものうんちの匂いはしっかり確認をします。お腹がゆるくなっていないかどうかも併せて確認をしています。
さいごに
漢方薬の味は苦いと相場は決まっています。
しかしたま家では、子どもが小さいころから漢方薬を使ってきたため、慣れてくれました。主に風邪を引いた時に使っていますが「おいしい」と言って進んで飲んでくれるほどです。
腸内細菌の働きを知って最良のタイミングで漢方薬を飲むことが、薬本来の力を発揮 することにつながるという空腹についてのお話でした。